東京銀座の元裁判官高橋隆一弁護士による離婚・慰謝料相談

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面会交流

1 面会交流権

昨今,幼児虐待の残酷なニュースを見る機会が多いと思います。しかし,離婚事件では,親権を取れなかった夫又は妻が子供と会える機会を少しでも実現しようとして真剣に争うことが実に多いのです。幼児虐待とは真逆で,別居中の親が子供と会いたいという自然な愛情・気持ちが失われていないことは,一つの救いです。このように親が子供と面会する権利を【面会交流権】と言います。夫婦が離婚するとき,現在の民法では離婚後の共同親権が認められていません。そこで,離婚に際し親権者となった親と子供が一緒に生活をすることになります(単独親権)。そのため離婚事件では,親権を夫と妻のどちらが取るかでまず争いになり,親権を取れなかった親がせめて子供との面会交流を実現しようとして深刻な争いになるケースが多いのです。
民法では,面会交流権を条文で定めています。
『父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者,父又は母と子との面会及びその他の交流,…その他の子の監護について必要な事項は,その協議で定める。この場合においては,子の利益を最も優先して考慮しなければならない。』とされています。
もちろん,協議離婚だけではなく,調停離婚や裁判離婚の場合も同じです。
ところが,日本以外の国では,離婚後も共同親権を認めている国が多いのです。そこで,現在,共同親権を認める方向での法律改正が法制審議会で審理されています。しかし,当面の間は,離婚すると,単独親権といって,夫か妻のどちらか一方が親権者となり相手方と別居し子供と生活を共にすることになります。そのため親権者となれなかった相手方の親が子供と会える機会が失われることが多いのです。

2 子どものための権利

このように親権を取れなかったため子供と離れて生活している親が,子供と会うために請求する権利が面会交流権であり,面会交流権は親のための権利であるともいえます。実際に,民法で認められている面会交流の条文を根拠に子供と会わせろと一方の親が請求しているのが実態です。しかし,子供が健全に成長していくためには子供のためにも,別居していても愛情を持っている実の親がいて自分を見捨てたのではなとして子供と接触し交流を継続することが,子供にとっても必要であると考えられているのです。面会交流権は,子供のための権利であるともいえます。
「子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と民法で定められているとおり,面会交流の取り決めをするとき,子供の都合や置かれている状況を無視して,片方の親の側の事情だけで内容を決めることは出来ません。面会交流の取決め事項を決める際には,何が最も子供の利益になるのかという観点からすすめることを心がけて下さい。

3 面会交流の取り決め内容

典型的な取決め事項は
『Aは,Bが子供Cと面会交流することを認める。その面会の回数は1か月1回程度を基準とし,回数,日時,場所及び方法については,子供Cの情緒安定に留意し,子供Cの福祉に慎重に配慮して,B及びAが誠実に協議してこれを定める。面会するときは,Aに事前に連絡する。』となります。
多くの場合は,このようにある程度抽象的に定めて,当事者間で子供の成長に合わせて協議する方が無難です。
① 上記のように,面会の頻度は,標準的には月1回程度とされています。しかし,これ以上に多い回数を求めるケースが多く,面会頻度はケースによってさまざまです。しかし,毎週1回と多く決めても,実際には,双方の親の都合,子供の都合や健康,小学校以降の学校行事の都合などで実現できないことが多いのです。
また,住所が遠い海外居住などで3,4か月に1回などにするケースもあり,人それぞれです。
② 面会時間と時刻のような具体的な取決めもよく見受けられます。子供と別居しても親子の仲が良い場合には,一日中一緒にいてもよいでしょう。夏休み,正月などに宿泊を伴う面会を認めるケースや,子供と旅行に行くことを認めるケースもあります。
③ 受け渡し場所や面会場所などの方法も具体的に決めることがあります。子供と相手がどこで待ち合わせをして,どこで子供を帰してもらうのかという取決めです。待ち合わせをする駅,近所の公園などの場所を決めます。別居した相手の家で会うのか,レストランで会うのかなども取決め事項です。しかし,面会場所を細かく指定しても,双方の都合で実現できなくなり,かえって取決めを守らないとして紛争になるのが実際です。余りにも細かい内容よりは,ある程度抽象的な受け渡し場所を決めた方が無難です。
④ 面会交流は,今では親同士がスマートフォンホやラインでお互いに確認できる連絡方法や携帯電話番号を教え合うなどして,面会交流についての連絡方法を決めることが必要です。そうすれば。その日になって突然キャンセルや変更があったり,事故等で,待ち合わせに遅れるときや場所がわからないときなどには,その連絡方法を使って対応することができます。

4 面会交流の方法の取り決め手続き

① 通常は離婚時に双方の話し合い(協議)で決めます。上記3の様な取り決め事項を定めて,協議離婚の合意書又は公正証書に具体的に取決め事項を書いておきます。
② 離婚の際に面会交流の方法を決めなかった場合には,後に面会交流の調停の申し立てをして決めることもできます。調停で決まらない場合には,家庭裁判所が審判によって面会交流方法を決めることになります。

5 これまで述べたように面会交流は,親の権利でもあり,子供のための権利でもあります。

① 面会交流の取決めをしても,子供が怪我や病気にかかった場合などは,一定限度拒絶出来ます。ただし,こういった場合にも原則として日程を変更することによって対処すべきであり,完全に面会交流をなくしてしまうことは出来ません。
② 他方,そもそも面会交流を行わないケースもあります。たとえば,同居時に相手が子供を虐待していたようなケースでは,子供と相手を会わせることが子供にとって悪影響なので,面会を見合わせることが認められます。
③ 面会交流拒絶についてよく問題になるのが,子供が相手方親と会うことを拒絶しているというケースです。実際,子供に確認すると「会いたくない」と言うケースが多いのです。しかし,子供は常に同居している親の顔色を見ているので,面会をしたいというと,自分を監護している親が傷つくことをなんとなく解っています。そこで,遠慮して「会いたくない」ということが実情として多くあります。
家庭裁判所もこのことを知っているので,単純に子供が「会いたくない」と言っていても,それを額面通りに受け止めることはしません。きちんと調査官という専門家が調査をして,それでも子供と相手の面会が相当ではないという判断したケースでのみ,面会交流が認められないことになります。それ以外のケースでは,裁判所は,基本的に面会交流を実施する方向で調整します。

6 養育費について

面会交流で,よく問題になるのが養育費との関連です。たとえば,「面会させてくれないなら養育費を払わない」,「養育費をもらっていないから面会交流を認めない」とお互いに主張することも多く見られます。しかし,面会交流の目的と子供の生活のための養育費は,法的には別の制度ですので,面会交流と養育費の不払いを関連付けて,拒否することは,認められません。

7 強制執行

調停や審判で子供との面会方法を具体的に取り決めても,相手がその約束を守らないケースが多くあります。このように,相手が面会交流をさせてくれない場合には,家裁の調査官を通じて履行するように勧告してもらいます。それでも会わせてくれなければ強制執行という方法をとることになります。
面会交流の強制執行は,単純にお金を取り立てるという強制執行とは異なります。子供の人格や気持ちを無視して実行するわけには行きません。そこで,通常は間接強制という執行方法をとることになります。取決めに反して子供に合わせない親に会わせるまで一定の金銭の支払いを命じることにより,間接的に約束の履行を促すことになります。もっとも,相手に収入や財産がない場合には金銭の取り立て自体が不能で効果がありませんし,相手が金銭を取られても痛痒を感じない人の場合にも効果が期待できません。だからといって,執行官が,子供を無理矢理連れてきて面会を行わせるということは,子供に対する悪影響が大きすぎるので基本的には認めらていません。

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